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毎日新聞がファミリービジネス・メディアを始めます。孤独な経営者や後継ぎ、起業家を「つなぐ場」になります

初めまして。毎日新聞が運営する「Refalover(リファラバ)」編集長の清水憲司です。各地に住むファミリービジネスの経営者や後継ぎ、起業家の方々がつながり、地元を起点に日本を動かす。リファラバは、そんな思いを持った人たちが集まる「原っぱ」になりたいと考えています。と言われても、ちょっと「?」かもしれません。ここでは、私たち編集部が目指すことや、リファラバが生まれた理由を説明していきます。

ファミリービジネスはまるで山登り!目線は高く、一歩ずつ前へ

私たち編集部はファミリービジネスという言葉を、ある一族が代々、経営をつなぐ同族会社というより、地元に根ざしながら家族的な結びつきで運営されている、すべての会社という意味で使っていきたいと思っています。

ファミリービジネスの経営は、山登りのようなものかもしれません。日々の仕事を一歩一歩、前に進めながら、目線は遠くの未来に向けていく。背中には自分や従業員の生活だけでなく、先代が積み重ねてきた会社の歴史と思いを背負っています。

どちらの道を進んだら良いのか迷ったり、道を間違えて引き返したりすることもある。時には思い切って、沢を跳び越えないといけない場所に差し掛かる。

急な雷雨に降られて、滑って転んだり、しばらく雨宿りをせざるを得なくなったりすることもあるでしょう。大きな組織にありがちな縦割りや、もたれ合いとは無縁な世界で、少しずつ個の力を磨いていく。

経営者は孤独な仕事」。ファミリービジネスを担う方々から聞こえるのは、そんな言葉です。

先の読めない時代の中で、毎日のように決断を迫られ、人には言えない悩みを抱えて、孤独を感じたり、自信を失ったりするケースが少なくありません。スタートアップとは異なり、ファミリービジネスでは、相談に乗ったり背中を押してくれたりするメンターがまだまだ少ないことも課題です。

普段は一人で山頂に向かって歩むファミリービジネスの経営者や後継者、起業家が出会い、励まし合い、互いに高め合う「原っぱ」をつくる。それが、人と人をつなぐために、長年ネットワークを培ってきたメディアが本当にやるべき仕事ではないか。そんなふうに私たち編集部は考えました。

仲間たちがいる「原っぱ」で力を蓄える

リファラバという「原っぱ」には、一人一人の良さを引き出しながら、登山ルートの相談に乗ってくれるナビゲーターがいます。肩を組み、一緒に進もうとするメンターがいます。ともに夢や悩みを語り合える仲間たちがいます。

ここで、会社と自分の人生をより良いものにするための知恵と技と力を蓄えていく。最初に目指していた山頂に到着する頃には、今まで見たことのない景色が広がっているはずです。そして、その先には、仲間と力を合わせて、地元の課題を一緒に解決していく。例えばそうした「次の頂」が見えてくることでしょう。

こんなとんでもなく楽しい未来を実現するのが、私たちリファラバのパーパスです。

リファラバって一体、何だろう。まだまだ「?」は消えないと思います。

詳しい説明に入る前に、リファラバが生まれた理由を紹介させてください。

リファラバ編集長の自己紹介です

リファラバ編集長の清水は20年近く、毎日新聞の経済記者として霞が関や永田町で動き回ってきました。財政や金融、通商、国際情勢といった経済の大きな仕組みに関わる取材を経て、2014年、米国の首都ワシントンに配属された私は、海外を旅したり暮らしたりする多くの人たちと同じように、その国と日本の違いについて考えるようになりました。

数え切れないぐらいある違いを、一言にまとめると、(エクストリームな人も含めて)バラバラな背景を持つ人たちが騒がしく暮らす米国と、穏やかでやさしいけれど、どこか冷めた日本……。経済やビジネスに引きつけて言うと、「なぜ米国にはシリコンバレーがあり、新しい会社が次々に出てくるのに、日本はそうではないのか」ということでした。

歴史や風土、競争環境、移民、起業家精神、エンゼル投資家……。たくさんの違いが指摘されてきました。それらはきっと正しい分析だけれど、何か物足りない。自分なりに「これだ」と思えるようなことを見つけたいと感じていました。

Think Differentを探して

「先生が何度も、Think Different(見方を変えよう)って言ってた」。ある日、小学校2年生の娘が何の気なしに言いに来ました。みんなが意見を出し合う授業で、先生が「Think Different」と繰り返して、それぞれがみんなと違う意見を出すように促していたようです。

アップルのイベントでスクーンに映し出されるスティーブ・ジョブズ氏=米カリフォルニア州で2017年9月12日、清水憲司
アップルのイベントでスクーンに映し出されるスティーブ・ジョブズ氏=米カリフォルニア州で2017年9月12日、清水憲司

「Think Different」といえば、「クレージーな人たちがいる」で始まるアップルの有名なCMです。創業者のスティーブ・ジョブズ氏のナレーションに乗せて、ムハマド・アリやガンジーら、本当に世界を変えた人々が次々に映し出されるのを見ると、胸が熱くなります。

ムハマド・アリ=UPI

その一方で、正直なところ「アップル一流のイメージ戦略だなあ」という斜めな感じ方もしていました。実際にこの言葉を使っている人がいるとしても、シリコンバレーにいるような、ごく一部の人たちだけだろうとも。

ところが、ごく普通の小学校でもこの言葉が使われている。「みんなとは違う『自分だけの輝き』を自分でつくって生きていこう」。そんなふうに子どもたちを導こうとしている。各地でこうした教育が行われているとすれば、米国で元気な会社が次々に生まれている理由が理解できる気がしました。

日本の中小企業が「ポテトの州」へ?

日本にも「Think Different」があるのだろうか。モヤモヤする中で出会ったのが、東京都八王子市で鋳物会社「栄鋳造所」を経営する鈴木隆史さんでした。

2017年6月、ワシントンで開催される米政府主催の展示会「セレクトUSA」に、日本の鋳物会社がやってくるという情報を聞きつけ、取材に出かけることにしました。

米アイダホ州政府の高官と意見交換する鈴木隆史さん(左から2人目)=清水憲司撮影
米アイダホ州政府の高官と意見交換する鈴木隆史さん(左から2人目)=清水憲司撮影

鋳物業界といえば、自動車産業をはじめ日本の製造業を支えてきた「縁の下の力持ち」ではあるものの、中国などとの価格競争に苦しみ、電気料金や燃料代の値上がりに弱いという特徴もあって、ニュースに出てくる時は「苦しい中小企業の代表例」という文脈がほとんどでした。

その鋳物会社が、大きな都市があるわけでもない米西部アイダホ州にやってくる。「アイダホといえばポテト」というイメージしかありませんでした。製造業とは縁遠いのに、州政府を挙げて栄鋳造所の進出を歓迎しているという。意外な取り合わせに「一体どういうことなんだろう」という疑問が先に立ちました。

ところが、州政府高官と並んで取材に答えた鈴木さんの話は、それまで自分が勝手に思い込んでいた「中小企業」のイメージとはかけ離れたものでした。

詳しくは、鈴木さんについて書いた毎日新聞経済プレミアの「私の家業ストーリー」を読んでいただきたいのですが、そのうちのいくつかのエピソードを紹介します。

Think Differentはここにいた!

2008年のリーマン・ショック後の不況で受注が激減した時、知人の助けで、たい焼きの型をつくって資金繰りをつなぎつつ、持ち前の技術力を生かして新たに開発した冷却装置が韓国の巨大半導体メーカーの目に留まり、飛躍のきっかけをつかんだこと。

シリコンバレーにある中国系の鋳物会社に視察に行き、技術では勝っているのに受注量でまったくかなわないことに、打ちのめされた気持ちになったこと。社内にグローバル意識を根付かせるため、日本国内に住むミャンマーや中東からの難民の方々を雇い入れてきたこと。

電気自動車(EV)のテスラを率いるイーロン・マスク氏に、果敢にもツイッターを通じて連絡を取り、冷却装置のプレゼンを実現させたこと。そして、今度は日本企業の進出先としては人気が高いとは言えないアイダホに拠点を構え、全米で営業活動を展開しようとしていること。

日本の「Think Different」はここにいた。型にはまらない行動力と、決して多くはないはずのチャンスをつかみとる決断力。その裏側には、熱い思いと緻密な計画がある。そして、いくつもの眠れない夜がある。

鈴木さんのような型破りなファミリービジネスの経営者は、日本中にたくさんいて、その卵たちもたくさんいる。そのことに気づいていなかった自分に対する恥ずかしさを感じるよりも、何だか目の前が開けたような気持ちになったのをよく覚えています。

リファラバで「できること」

リファラバは、ファミリービジネスの経営者や後継ぎ、起業家たちが、会社と自分の人生をより良いものにするための力を蓄える「原っぱ」です。そこには、経営のさまざまな知恵と技を備えたナビゲーターや、挑戦を後押ししてくれるメンターがあなたが来るのを待っています。

「リファラバでできること」を具体的に説明していきます。リファラバは、経営者や後継ぎの皆さんの潜在力を解放するプログラムを用意します。

  • 自社を伸ばす

  • 自分と自社を深掘りする

  • 「遠く」を見る

の三つです。

一つ目の「自社を伸ばすプログラム」は、会社の良いところを探し出し、新たなビジネス展開を提案する売り上げUPの仕掛け人、岡崎ビジネスサポートセンター(オカビズ、愛知県岡崎市)の秋元祥治さんが、皆さんをナビゲートします。

「自社を伸ばすプログラム」のナビゲーター、秋元祥治さん=本人提供

二つ目の「自分と自社の深掘りプログラム」。こちらのナビゲーターは、未来デザイン経営の先駆者、郡司成江さんです。
宇都宮市を中心に20店舗以上の美容室を展開するビューティアトリエグループ代表の2代目である郡司さん。将来ありたい自分や自社の姿を思い描きながら、今すべきことを発想する「逆算思考」、会社と社員のビジョンを調和させていく「経営方針書」のメソッドを使って、普段は見えにくい自分や自社の価値を見つけるお手伝いをします。

「自分と自社の深掘りプログラム」のナビゲーター、郡司成江さん=東京都千代田区で2022年7月12日、宮本明登撮影

三つ目の「遠くを見るプログラム」は、行き詰まりがちな日常から離れて、異業種の人々や複業人材、スタートアップで働く人たちと一緒に、地域の課題解決について考えたり、海外の情報や空気に触れたりすることで、自分の幅を広げ、変化を楽しめる場をつくっていきます。

このプログラムは、イノベーションを生むために「遠く」を見ることの大切さを説く早稲田大大学院・入山章栄教授の理論が下敷きになっています。

入山教授は「日本では、ファミリービジネス、スタートアップ、大企業のそれぞれにコミュニティーが生まれているものの、インナーサークルになりがちで、分断が生じている。そのかけ橋が必要だ」と話します。

早稲田大大学院の入山章栄教授=東京都新宿区で、丸山博撮影

「遠くを見るプログラム」の開催場所は、山村や離島だったり、海外だったり。フィールドワークを通じて、入山教授の言うような、普段は接点のできにくい人たちとのかけ橋にもなります。

リファラバは、これらのプログラムが終わった後も、気づきや学びをしっかり自分のものにできるよう、参加者同士がずっとつながり、学び合える場を用意していきます。

また、三つのプログラムは、一直線ではなく循環する関係にあります。だから、どこから始めても大丈夫。一つのプログラムに参加した後、別のプログラムに関心を向けてもらえるような内容にしていきます。

しくじりも大事です

このほかにも「しくじり2.0」「みんなの経営相談」など、さまざまなコンテンツを用意しています。

皆さん、失敗するのって嫌ですよね。でも、アインシュタインはこんな言葉を残しています。

相対性理論を提唱したアインシュタイン=UPI

「失敗や挫折をしたことがない人とは、何も挑戦したことがない人だ」

そう、失敗は挑戦の証し。失敗を失敗で終わらせずに、再び立ち上がり、次の挑戦の糧にしていく。そんな生き方を実践する人たちを紹介していきます。

「みんなの経営相談」は、日々の経営の中で生じる皆さんの困り事やお悩みに、ナビゲーターや専門家たちが一つ一つ応えていきます。

新しい自分を手に入れたい

長い長い文章にお付き合いくださり、本当にありがとうございます。最後になってしまいましたが、リファラバの名前の意味をご説明します。

もう一度(Re)、地元に根ざしたファミリービジネス(fa)の価値を、愛を持つ仲間たち(lover)と創りあげていく。

そんな思いを込めました。

私たち編集部にとっても、リファラバは全く新しい挑戦です。ドキドキとワクワクが止まりません。皆さんと一緒に「原っぱ」に集まり、新しい自分を手に入れたい。これから、よろしくお願いします。

▼ リファラバ編集部へのお問い合わせはこちらより

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