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人材育成を強化したい~まず必要なのは経営者自身の「ゴール設定」

今回の相談は「自社製品の開発に向け、ベテラン社員から若手への技術継承も含め、人材育成に力を入れたいと考えています。どんな点に注意すべきでしょうか?」。東京都港区で金属機械加工業の会社を営む40代社長からの「お悩み」です。

リファラバの「自分と自社の深掘りプログラム」のナビゲーターで未来デザイン経営の先駆者、郡司成江さん(ビューティアトリエ代表)が答えます。

回答者の郡司成江さん=宮本明登撮影
回答者の郡司成江さん=宮本明登撮影

#人材育成
#経営方針
#新人研修

に課題を感じている方々にお薦めです。

毎日のように湧き出してくる困り事や悩み事。でも、相談できる相手が見つからない……。そんなファミリービジネスの経営者、後継者の方々は少なくないと思います。「みんなの経営相談」は、リファラバのナビゲーターや、ファミリービジネスへのサポート経験が豊富な専門家たちが、皆さんの困り事や悩み事に一つ一つ親身になって答えていきます。

まずゴールを決める

最初に、会社として「どんな人材に育てたいのか」「人材育成において何を大切にするのか」をまとめておくことが必要だと思います。その核となる部分が決まっていないと、どんな人材育成カリキュラムを組むのがいいのかが見えてきません。

「商品開発ができる人材を育てたい」という場合と、「会社の理念に合った商品開発ができる人材を育てたい」という場合では、カリキュラムも大きく変わりますよね。

単に商品開発だけを期待するのであれば、その能力を伸ばすことに時間をかければいい。

しかし、会社の理念に合った商品開発をしたい、例えば「お客さまを大切にする」という会社の理念に沿って、「お客さまのニーズに基づいた、ずっと愛される商品の開発ができる人材を育てよう」と考えるなら、最初に教えるべきなのは、会社の考え方や「あり方」、つまり会社の歴史や理念であり、「きちんとあいさつをする」「チームで仕事をする」といった普段から会社が大切にしていることになってくるでしょう。

まずは「会社にとってどんな人材がベストなのか」というゴールをはっきりさせることが重要です。そのゴールが設定できれば、どの社員が担当するのがいいのか、どんなチームを作って人材育成に臨むのか、どういうカリキュラムを作っていくべきなのかも、おのずと明確になります。

「誰が教えるか」が大切

ご質問にもあるように、多くの会社にとって、ベテラン社員から若手社員への技術の承継が課題になっています。

私が感じているのは、「誰が教えるのか」がとても大事ということです。技術に秀でているベテラン社員だけれども、言葉や教え方が荒っぽかったり、若手とのコミュニケーションの取り方に難があったりすることはよくあると思います。

その場合、その人ひとりで若手を教育するのはやはり難しい。下手をすると、若手がやめてしまうということもあり得ます。そうしたことを避けるには、技術に優れたベテラン社員と、若手とのコミュニケーションが得意で「通訳」のような役割のできる別の社員がチームを組んで人材育成に当たった方がいいでしょう。

手応えの得られる場面をつくる

人材育成は仕事に必要な知識を教えるところから始まりますが、それだけですぐに仕事に生かせる人は多くありません。カリキュラムの中で、学んだ知識を実際に使ってみる、さらには働くことの手応えを得られる場面をつくることも大切だと考えています。

私たちの美容師の世界で言うと、最初に覚えるのはシャンプーです。若手の中には、その段階で辞めていってしまう人もいます。シャンプーは時間をかけて腕を磨き、よほど上手にならないと、お客さまに「気持ちよかった」とは言ってもらえない。そうした仕事の手応えを感じられる前に、心が折れてしまうからです。

だから、人材育成のカリキュラムの最初の段階で、学んだ知識を使って仕事の手応えを得られるような体験の場面、「ありがとう」と言ってもらえる場面をあえてつくっていく。

何か一つの課題を一人ではなく、数人のチームで一緒に取り組ませる方法も、手応えを得られる体験のつくり方としては有効だと思います。

私たちの会社では毎年、採用面接が終わってから「今年の新人はこんな特徴がある」と話し合い、前年の教訓も踏まえて、新入社員研修の内容や時間配分を見直すようにしています。

それぞれの業界で「最初に教えること」「その次に教えること」……というふうに、スタンダードな順番があるかもしれません。

しかし、「Z世代」と呼ばれる今の若手にはどんな育成方法がいいのか、場合によっては順番を入れ替えていくことで、最初から手応えの得られるカリキュラムをつくることも検討していただきたいポイントです。

「これだけは譲れない」を明確に

人材育成の過程でも、会社が人材育成の核を決められているかどうか、ゴールをきちんと設定しているかどうかが重要になります。

私たちの会社では、優れたカット技術という以上に、お客様ときちんとコミュニケーションを取れる優しいスタッフに育てたい、気づきのあるスタッフに育てたいということが核であり、そこをゴールにしています。

この部分が明確でないと、教わる若手の方も、教える先輩社員の方も、人材育成の成果が出ているのかどうか判断できませんよね。加えて、会社として「これだけは譲れない」という核やゴールがはっきりしていないと、先輩社員が若手に「これはダメだよ」と注意する判断基準もあいまいになってしまいます。

例えば、カット技術は優れているけれど接客に身が入らない若手から「なぜ、それではダメなんですか?」と聞かれた時に、先輩社員の方が「うちの会社は技術以上に、人を思うことを大事にしているから、あなたの態度はよくない」というふうにきちんと説明できなければ、若手も納得できませんから、結局、良い人材育成にはなりません。

ファミリービジネスの経営者の多くは、社員に「数年間働いてくれればいい」というより「できるだけ長く働いてほしい」と思っているのではないでしょうか。

長く働いてもらうには、自分の会社のことをよく知り、好きになってもらうことが重要です。そのためにも、まず経営者自身が人材育成のゴールを明確にすることから始め、それに基づいて、どんな体制を組み、どんなカリキュラムで人材育成を進めていくのか、設計図を描いていくことが大切だと考えています。

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