見出し画像

「営業マンが1人足りないから入ってもらおう」はNG!失敗しない副業・兼業人材の活用方法とは

「求人を出しても人が来ない」「スカウトサービスは高すぎて手が出ない」――。こんな悲鳴を頻繁に聞くようになった。

人材獲得競争の激化に伴う無理な賃上げが、中小企業の経営を圧迫する。帝国データバンクの全国企業倒産集計によると、2023年上半期の「人手不足倒産」は110件で、過去最多ペースで進行している。

こうした中で注目されているのが、「副業・兼業人材」や「プロボノ人材」といった外部人材の活用だ。副業・兼業人材とベンチャー企業や中小企業をつなぐマッチングサービスも広がりを見せている。

2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、「モデル就業規則」から副業禁止の項目を削除したことも、この動きを後押しする。

とはいえ、受け入れる側にはまだ不安もありそうだ。「『副業』なんて片手間で仕事をされても困る」「報酬に見合った仕事をしてくれるのか」といった懸念から、外部人材の活用に二の足を踏む経営者は多い。

そこで、副業・兼業人材マッチングサービスとは一体どんなものなのか、どんな人材が応募してくるのか、企業側がこうした人材をうまく活用するにはどうすればよいのか、などなど、サービス提供者に直撃してみることにした。


中小企業の副業募集に手を挙げる「すごい人材」

最初に訪ねたのは、みらいワークス(東京都港区)で副業人材マッチングプラットフォーム「Skill Shift」の事業責任者を務める岩本大輔さん。みらいワークスは、プロフェッショナル人材の転職支援サービスを中核に据えつつ、副業・兼業など新たな領域にも参入し、少しずつ業績を伸ばしている。Skill Shiftには、1万1000人の副業・兼業人材が登録。既に45都道府県、322市町村の中小企業がサービスを利用しているという。

早速、岩本さんにSkill Shiftの利用方法について聞いた。

まず、副業人材を受け入れたい企業は、Skill Shiftの求人サイトに募集内容を掲載する。

この記事を見て副業・兼業をしてみたいと思った都市部の大企業の社員やフリーランスがSkill Shiftに登録。そのうえで企業に直接、メールでプロフィルや志望動機などを送信する。

企業側は送られてきた情報を参考に、受け入れたい人材と連絡を取り合い、直接交渉のうえ、業務委託契約を結ぶ

「Skill Shift」の求人サイト

Skill Shiftへの求人掲載料は9万8000円(税別)。マッチング成立後、仕事を頼んだ副業・兼業人材に謝礼(業務委託料)を支払うが、成功報酬や仲介料などSkill Shift側に対する追加の支払いはない。1回の求人掲載(おおむね1カ月)で何人の副業・兼業人材と契約してもOKだという。

副業人材に払う報酬は1カ月3~5万円が妥当

では、副業人材に対する謝礼は一体どのぐらいが適当なのだろう。

謝礼の金額は両者の話し合いによって決まるが、Skill Shiftの場合、1カ月あたりおおむね3万~5万円、平均3.4万円だ。副業・兼業人材は在宅勤務で仕事を請け負うため、作業時間はケース・バイ・ケースではあるものの、おおむね1カ月10時間程度だという。

時給に換算して3000~5000円。高いスキルを持つ人材にしては単価が安くはないか?という疑問が湧く。

「謝礼の相場はサイト上でもうたっていますが、それでも、こんなすごいプロフェッショナル人材が……と驚くような人たちが集まってきます」と岩本さん。

人生100年時代、手を挙げる人々の多くは、更なるステップアップを目指して挑戦したい、本業ではできない経験を積みたい、実践の場で力をつけておきたい、起業に向けて経営感覚を養いたい、という人たちだ。30~40代が中心で、シニア世代も少しずつ増えているという。

中には「無償でやらせてほしい」というケースもあるが、そこはあくまでもビジネス上の契約。「責任を持って仕事をしてもらうためにも、有償とするよう促しています」と岩本さんは言う。

ツイッターのフォロワー数が「340%増」という事例も

どんなマッチングが成立しているのか、一例を見てみよう。

例えば、創作体験や飲食店を運営している石川県の観光施設では、SNS運用に強い副業人材を2人活用することで、半年の間にツイッターのフォロワー数が340%増、インスタグラムも450%増え、集客につながったという。

また、熊本県のドライビングスクールでは、ITベンダーに言われるがままに複数システムを導入した結果、使い勝手が悪く、非効率になっていた。副業人材として受け入れたITのスペシャリストに利用できる補助金や助成金の調査・申請をしてもらったり、ベンダーとの折衝の場に同席してもらったりすることで、システムの一本化をすすめ、使い勝手が格段に良くなったという。

Skill Shiftでは、副業・兼業人材にどんな仕事を依頼するか、どの人材と契約を結ぶかは、企業の判断に任せている。仲介業者の介入を極力少なくすることで、サービスを安く提供する狙いがある。その代わりに、セミナーや手厚いマニュアルを用意し、中小企業に副業・兼業人材の活用のコツを事前にしっかり伝授することで、ミスマッチを防いでいる。

岩本さんによると、副業・兼業人材に頼む仕事として適しているのは、経営企画やSNS運用、広報、新規事業の立ち上げや商品開発といった「現状の人員ではなかなかできないプロジェクト単位の仕事」。一方で、営業が足りない、製造ラインが1人足りない、といった理由で長時間、長期間頼む仕事は避けた方がいいという。

丸投げも良くない。ノウハウが引き継がれず、副業・兼業人材が去ってしまった後、困るからだ。「自分たちの経営課題をともに解決してくれるパートナーのような存在と考えるのがベスト」と岩本さんは言う。

採用に不慣れな中小企業に「徹底的に寄り添う」

Skill Shiftと全く異なる方法を取るのは、岐阜県のNPO法人「G-net」が運営する「ふるさと兼業」だ。ふるさと兼業の最大の特徴は、「受け入れ側の企業に徹底的に寄り添う」こと。どういうことなのか、担当の掛川遥香さんにオンラインで話を聞いた。

ふるさと兼業のキーマンは、中小企業と副業人材の間に入る「コーディネーター」だ。中小企業がどのような人材を求めているのかを事前にしっかりヒアリングし、必要に応じて、求人サイトに掲載する募集要項のライティングにも関わる

「ヒアリングをするうちに、企業側がほしいと思っている人材と、実際に必要な人材にずれがあることに気付く場合がある」と掛川さん。「そういうときはコーディネーターの意見を企業側に説明し、軌道修正をすすめる」という。

応募者のエントリーシートには、応募の動機やスキルなどが記されているが、その内容を読み解くのも、採用に不慣れな中小企業にとっては難しい。

コーディネーターは、エントリーシートのどこに注目すべきかアドバイスし、オンライン面接にも同席。最終的な判断は企業に任せるが、ミスマッチが生じないよう、採用から、場合によっては副業人材が定着するまで支援する。

企業からふるさと兼業側への支払いが生じるのは、マッチングが確定してからだ。サービスの導入決定からプロジェクト設計、募集開始、面接、マッチングまでの費用とプロジェクトのキックオフ支援(1カ月間)として35万円を支払う。

オプションとして、2カ月目以降のプロジェクト推進支援(有料)も付けることができる。

そのうえで、副業人材には報酬として1カ月あたり3万~6万円を支払う

「ふるさと兼業」のサイト。エリアごとにコーディネート団体がある

ふるさと兼業が、コーディネートにここまで力を入れるのには、訳がある。

実はサービス開始当初は、マッチング後は企業と人材に全て任せていたが、「初めて副業人材を受け入れる企業」に「初めて副業をする人材」が入る場合、プロジェクトがうまく進まず、中段してしまうケースが多かった。

受け入れ側の体制を整えたり、不慣れなリモートでのプロジェクト遂行をサポートしたりする必要性を実感したという。

ちなみに、ふるさと兼業は地域ごとにコーディネート団体が分かれていて、G-netは全体の事務局と東海地域のコーディネート団体を兼ねている。掛川さんが説明してくれたのはあくまでも、G-netの手法だが、他の地域のコーディネート団体もおおむね似た方法を採っているという。

最後に、掛川さんにも「副業人材サービスを利用するうえで気を付けたいポイント」を挙げてもらった。

大企業と中小企業では「優先すべきポイント」が異なる

一つ目のポイントは「お互いに見ている景色が違うことを理解する」ことだそうだ。

例えば、小さな鮮魚店に副業人材として自動車業界大手の社員が入ったケースがあった。

大企業の社員の「仕事相手」というと、部署にもよるが、社内の上司や他部署の社員という場合も多い。つまり目の前に末端の消費者はいない。一方、鮮魚店は、お客さんや料理店の店員ら、末端消費者と日々接している。

コミュニケーションにおいて優先すべき点が異なるということを、互いに理解しておく必要がある

そして二つ目のポイントは、「配慮はしても遠慮はしない」こと。

例えば「広報プロジェクト」を依頼する場合、中小企業側は、とにかくどんどん自社のことを発信してもらえるものと期待するが、大企業の広報担当は「企業の強み」や「誰に何を伝えたいのか」などをじっくり考えるところからスタートする。

互いになぜそれが大事なのか、遠慮せずしっかりコミュニケーションを取らないと、意識のずれが生じてしまう

【副業人材活用がうまくいくコツ5カ条】
① 「いまできていない仕事」を頼む
② 「丸投げ」はしない
③ リモートで仕事を依頼する場合も定期的に対面で話をする
④ お互いに「見ている景色が違う」ことを意識する
⑤ 配慮はするけど遠慮はしない

編集部作成

使える!国や自治体が仲介業者への補助を支給

物価高や賃上げの動きを背景に、国も副業・兼業人材活用推進を急ピッチで進めている。

経済産業省は副業・兼業人材の受け入れ企業が仲介業者などに支払う額の2分の1(上限額1人あたり50万円、1事業者あたり250万円)を補助する制度を今年度からスタート。自治体も、補助金・助成金を支給するところが増えており、副業・兼業人材の活用のハードルが下がり始めている。

コツをしっかりつかんだうえで、導入を検討してみてはいかがだろうか。

▼ Refalover(リファラバ)とは?

リファラバ(Refalover)は、
Re:もう一度、地元の(region)
Fa:ファミリービジネスの価値を
Lover:愛を持って高め合う人たち(の場)
という意味を込めています。

リファラバの情報は、メルマガでいち早くお知らせしています。
よろしければ、この機会にぜひご登録ください。
メルマガ登録フォーム(無料)


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

リファラバの記事をご覧いただきありがとうございます!編集部へのお問い合わせはこちらよりお願いします。