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「新規事業を始めよう」リファラバ×八王子イノベーションプログラムを開催

東京都八王子市は中小企業の第2創業を支援する「八王子イノベーションプログラム」を2022年10月末〜2023年3月に実施しました。プログラムの企画・運営には毎日新聞のファミリービジネスメディア「リファラバ」も参画。「既存事業を脱却し、新規事業を始めよう」を合言葉に、経営者や後継者らが奮闘を続けた半年間の取り組みを報告します。

プログラムを受講したのは、八王子市内の中小企業経営者など8人。業種は製造業、建設業、飲食業、清掃業などさまざまで、ファミリービジネスの経営者や後継者だけでなく、創業経営者も参加しました。

運営にはリファラバのほか、八王子市内の企業経営者らが中小企業の国際化を目指して立ち上げた「発ジャパン」、海外70カ国にライフスタイル・リサーチャーを有するリサーチネットワーク運営の「TNC」が携わりました。

プログラムは、講師を招いて新規事業の創出に必要な知識や情報をインプットする全7回の「プレナリープログラム」(全員参加)と、プレナリーで学んだ知識をさらに深めて事業に落とし込んでいく全21回の「パーソナルプログラム」(任意参加)で構成。

最終日の3月11日には、プログラム受講者によるピッチ大会を開催し、自社の社員や八王子市関係者などに対して、新規事業の構想をプレゼンテーションし、これから取り組んでいく決意を熱く語りました。

最終プレゼンをするプログラム受講者の一人、小室鉄建の小室健太さん

リファラバのナビゲーターがプログラム講師に

プログラムは、新規事業のシーズ(種)を見つけるために、自分と自社がこれまでやってきたことや既存事業を見つめ直す準備期間(10月29日〜1月21日)と、こうした「棚卸し」を経てクリアになってきたそれぞれの志をもとに、ビジネスモデルを構築し、プレスリリースに落とし込む事業化期間(1月21日〜3月11日)の2部構成で行われました。プレナリープログラムでは、リファラバのナビゲーターらが講師を担当しました。

①新規事業推進のマインドセット

講師:SDGsな豆腐店「染野屋」の小野篤人さん

キックオフとなった初回のプレナリー(10月29日)の講師には、年間売上高300万円程度だった茨城県取手市の豆腐屋を引き継ぎ、移動販売をてこに約8年で売上高10億円を突破した染野屋社長の小野篤人さん

染野屋社長の小野篤人さん
染野屋社長の小野篤人さん

事業を拡張する傍ら、小野さんは2009年の長女の誕生をきっかけに、地球環境保護を自らの使命に据え、移動販売だけでなく、大豆ミートの販売や大豆の有機栽培といった新規事業に取り組んでいます

受講者と小野さんとのセッションでは、新規事業立ち上げの「成功モデル」をイメージしてもらいつつ、年商300万円からのスタートだった小野さんの「成長体験」を聞くことで、受講者に新規事業を「自分ごと化」してもらうためのマインドセットを行いました。

②新規事業の「型」をインプット

講師:公認会計士・税理士の大野修平さん

第2回のプレナリー(11月19日)の講師には、公認会計士・税理士の大野修平さんをお招きしました。

公認会計士・税理士の大野修平さん
公認会計士・税理士の大野修平さん

大野さんは、スタートアップ経営者が資金調達する際の事業計画書作成支援を得意としています。この日は、大野さんが事業計画書作成支援の際に使うフレームワークを活用。受講者はビジネスアイデアの事業化に必要な要素を洗い出し、フレームワークに落とし込んでいきました。

③自分と会社の未来をデザインする「逆算思考」

講師:ビューティアトリエ代表の郡司成江さん

第3回のプレナリー(12月17日)は、宇都宮市を中心に美容室やフォトスタジオ、コミュニティスペースなど11業種を展開するビューティアトリエ代表で、リファラバのナビゲーターでもある郡司成江さんが講師を担当しました。

ビューティアトリエ代表で、リファラバ・ナビゲーターの郡司成江さん(右)

郡司さんは、現在の自分や会社の姿から目標を決めるのではなく、将来なりたい「理想の自分」や実現したい「自分の未来」を思い描き、未来の理想の自分なら今どんなふうに振る舞うかを考え、行動する「逆算思考」を実践してきました。

「逆算思考」を実践することで日々の行動に迷いがなくなり、経営に対するワクワク感が増したという郡司さんから、「逆算思考」の進め方を伝授してもらいました。困難や迷いの付きまとう新規事業の立ち上げには、未来を描いて自分の軸をずらさないマインドが必要だからです。

④自分や自社の棚卸しを経て、考案したビジネスアイデアを発表

ここまで3回のプレナリープログラムを通じて、受講者は自社の事業や自分のこれまでの歩みの「棚卸し」を行いました。運営事務局からは、年末年始に改めて自分自身の志を振り返ってもらい、その上でどのような新規事業を立ち上げたいのかをじっくりと考えてもらうことを「宿題」としました。

そして、年が明けて1月21日の第4回プレナリーでは、イノベーションプログラムの中間まとめとして、ビジネスアイデアの発表会が行われました。

⑤「予算も人手もない中で、新規事業のアイデアをどのように形にするか」

講師:オカビズの秋元祥治さん

受講生によるビジネスアイデアが固まってきた第5回のプレナリー(2月7日)の講師は、愛知県岡崎市の「岡崎ビジネスサポートセンター」(オカビズ)の秋元祥治さん。リファラバ・ナビゲーターでもある秋元さんは、8年間で3000社以上の経営相談に応え、1000件を超える新商品・新規事業の創出を支援してきました。

リファラバのナビゲーターである、オカビズの秋元祥治さん
リファラバのナビゲーターである、オカビズの秋元祥治さん

新規事業のアイデアが思い浮かんだとしても、中小企業の経営者は予算も人材も限られているため、何から手を付けて良いかが分からず、行動に移せないケースが多いのが実情です。

そこで運営事務局は、同じような悩みを抱えた多くの経営者を伴走支援してきた秋元さんを講師にお招きすることで、ビジネスモデルを磨き、限られた予算の中でも新規事業を立ち上げられる発想法を学んでもらいました。

⑥「発想した新規事業をどのように広めるか」メディアが取り上げたくなるプレスリリースの書き方

講師:UROCO代表の伊東将志さん

それぞれのアイデアを事業として動かすため、「顧客が誰か」「どうやってマネタイズするか」といったビジネスモデルを考えた後は、自社で取り組んでいる新規事業を「どうすれば多くの人に知ってもらえるか」について学びました。

第6回のプレナリー(2月18日)の講師は、三重県尾鷲市に設立されたまちづくり会社で、「尾鷲ならでは」の数々の仕掛けを行い、街ににぎわいをもたらしたUROCO代表の伊東将志さんが担当しました。

講演後の懇親会で受講生と話すUROCO代表の伊東将志さん(中央)

伊東さんが得意とするのは、人々の心に響くプレスリリース。伊藤さん発のプレスリリースは、地元のニュースとして取り上げられるだけでなく、全国ニュースになることもあります。

日々、大量のプレスリリースに目を通す新聞やテレビの記者に、どうすれば自社が発信したプレスリリースに目を留めてもらえるか。「プレスリリースの書き方の極意」をワークショップ形式で学びました。

プレスリリースを書くことは外部への発信と同時に、頭の中にあったビジネスモデルをもう一度整理して、自分で言語化することにもつながります。受講者はこの講座を通じて、自らのビジネスモデルが事業として成立するかを再考する機会にもなりました。

⑦海外SDGs情報や事業開発ワークショップ 20回のパーソナルプログラムを展開

プレナリープログラムの合間には、発ジャパン、TNC、毎日新聞社の起業家支援組織である毎日みらい創造ラボが、海外情報をインプットするための1対1のセッションや事業開発ワークショップをそれぞれ行いました。また、郡司さんや秋元さんといったリファラバのナビゲーターによる個別指導も実施しました。

発ジャパンのプログラムでは、Spline代表の次重彰人さんをメンターにした事業開発のワークショップや、発ジャパンの外国人人材によるビジネス英語習得のための講義が行われました。

大手メーカーやコンサルティング会社で多数の新規事業経験のある次重さんは、栃木県足利市で航空機部品などの製造会社AeroEdgeの立ち上げメンバーでもあります。次重さんからは新規事業を立ち上げるためのチーミングやミッション、ビジョン、バリューの構築の仕方などを学びました。

TNCは、「食」を中心に、海外に広範なリサーチネットワークを持ちつつ、国内の地場産業とも強い協力関係を築いており、海外リサーチャーを通じた大企業の商品開発支援や、地域に根ざした中小企業が自社のリソースやアセットを見つめ直す伴走支援などを行ってきました。

パーソナルプログラムでは、これまでTNCが培った豊富な知見とネットワークを活用し、海外のSDGs(持続可能な開発目標)情報の提供や受講者による海外展開を見据えた個別のメンタリングを実施しました。

毎日みらい創造ラボは、起業家を支援する3〜4カ月の「アクセラレーションプログラム」を5年間で計8回実施。30社超のスタートアップの立ち上げを支援し、これまでに16社に出資も行ってきました。これまで起業家に提供してきた事業開発ワークショップを実施したほか、プロモーションやプレゼンテーションの方法などについて個別のメンタリングを実施しました。

また、リファラバ編集部からは、ナビゲーターによる個別指導のほか、連携団体である「跡取り娘ドットコム」のメンバーや、デザイン会社「コンセント」、リファラバとつながりのある経営者とのミートアップの場を提供しました

跡取り娘ドットコムは、孤独になりがちな女性経営者の経営面やメンタル面での支援を行いながら、経営者同士のコミュニティーを構築しています。プログラム受講者は女性を中心とした経営者に事業アイデアを披露することで、さまざまな角度からアドバイスを受けました

プログラムは新規事業の入り口 事務局は引き続き伴走支援を実施

こうしたプログラムを経て、参加者は3月11日のピッチ大会に臨みました。受講者からは終了後、「視野が広がった」「思いがけないほどのインプットがあった」「自社のこと、社会の課題について考えるいい機会だった」といった感想が聞かれました。

運営事務局は、プログラム終了後も定期的に受講者の事業の進捗(しんちょく)状況を発表する場を設け、個別セッションも実施するなど継続的な支援を行う予定です。

毎日みらい創造ラボとリファラバ編集部は、ほかの地域でも、こうした新規事業開発支援や経営者育成のためのプログラムに参画していきます。ご関心を持っていただける自治体や経営者団体、企業の方々からのご連絡、お問い合わせをお待ちしています


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