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会社幹部への貸付金が見つかった。回収するには、どうしたら?

今回の質問は、「継いだばかりの時にはよく見ていなかったのですが、資産の中に会社幹部への貸し付けがあることがわかりました。会社としては回収を図らなくてはいけないのですが、幹部が資金的に裕福なわけもなく、本当に回収できるのか不安になっています。幹部には引き続きがんばってもらう中でどのような対処が良いか、教えていただけますか?」という内容です。東京都八王子市の製造業、40代社長さんのお悩みです。

ファミリービジネス事業承継研究所パートナーで、日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)フェローの桐明幸弘さんがお答えします。

貸し借りが急きょ問題になることも

日本には中小企業が約350万社あると言われています。そのなかで、親族がいわゆる家業として会社経営を行っている「ファミリービジネス」が90%以上を占めるという調査結果もあります。
2003年から中小企業の事業再生支援を数多く行ってきた経験から、私はファミリービジネスに共通する課題を感じてきました。

そのなかでも大きな問題になることが多いのが、ご質問にあるような会社と親族、あるいは従業員との間の金銭の貸借関係です。

ファミリービジネスにおいては、従業員も含めて家族的な経営体制が会社の強みになっていることもあり、えてして親族と会社、従業員と会社の間で、金銭のやり取りがルーズになりがちです。

従業員が金銭的に困っているということであれば、会社から資金を融通することはファミリービジネスの中小企業ではよくあることではないでしょうか。ときには、会社の資金繰りが苦しいときに、従業員から一時的に借金することもあります。
事実、私は事業再生支援の対象となる会社でこのような資金のやり取りを多くみてきました。

通常であれば、このような資金のやり取りは時間の経過とともに整理できるものなのですが、会社に何らかのイベント、例えば新型コロナウイルス禍や災害が起きて業績が急激に悪化する、あるいは事業承継によって経営者が交代する、債務超過に陥って銀行から管理される――といった事態が起こると、こうした資金のやり取りが急に問題になることがあります。

可能ならば、普段から会社と親族、会社と従業員のお金のやり取りについては、きちんと契約書を交わして管理しておくことをお勧めします。
そして、そのような貸し付けや借り入れなどが生じた場合には、会社としてどのような回収法や返済方法を取るのかを文書規定として整備しておいたほうが良いでしょう。少し前置きが長くなりましたが、以下にこの問題に対処するプロセスについて回答していきます。

まずは冷静に事実確認を

まず、その幹部の方とよく話をして、会社からお金を借りた経緯や原因について確認をし、いつからどのように借りて、その返済についてどのようなやり取りが前社長との間でなされたかなどを、あくまで冷静に慎重に事実確認をしましょう。
その際、幹部の方には、以前にもまして会社のために頑張っていただくことを期待していることを、しっかり伝えるようにしたほうがいいと思います。

回収方法について話し合う

次に、会社からの借金をどのように返済するつもりなのかを聞いてみてください。本人に返済する意思があり、また資金もあるのであれば一括で弁済してもらうことも可能でしょう。
返済の意思はあっても一括で弁済する余裕がないのであれば、毎月の給与から一定額を天引きするという方法で分割弁済してもらうことが通常の方法になると思います。

もちろん、毎月分とボーナス分を分けて設定することも構わないと思います。分割の場合、もし可能ならばその本人の保有する資産に抵当権や質権(通常、火災保険の証書などに質権設定することが多いと思います)を設定してもらうことも必要かと思われます。

税務上の対応も要確認

さて、この幹部の返済能力に問題がなければ、帳簿上は長期貸付金として計上していてもいいのですが、返済能力がない状態で会社を退職してしまうなど想定外のことが起こる可能性もあります。

そうした事態になった場合には、税務上の損失として処理することが可能になると考えられますが、その際には、税理士の先生とよく相談して税務署に確認のうえで損失処理をしてください。こちらの思い込みだけで処理すると税務署から是正措置を要請されることがあります。

トラブル回避には明確な規定が必要

以上、前代表から事業を引き継いだ際に、会社帳簿に幹部への貸付金や、逆に幹部からの借入金などがあることを発見した場合の対処方法についてお伝えしました。

冒頭でもお話ししましたが、日本の中小企業のほとんどがファミリービジネスと呼ばれる同族経営であり、会社と親族の間の貸借関係が生じやすいことが特徴です。しかし、だからといって、どんぶり勘定の「なあなあ」で貸借関係をあいまいにしておくと、いざという時に大変なトラブルが生じることになりますから、できるだけ明確な社内規定を置いて管理するようにしていただきたいと思います。

そうすれば、後継者が継いだ後になって驚くようなこともなくなりますから、スムーズな事業承継が可能になります。

私ども、ファミリービジネス事業承継研究所では、「会社の事業承継は一過性のイベントではない」と考えており、承継に至る前に時間をかけて念入りな準備をする過程で、一見しただけではわからない会社のトラブルやリスクを回避するための支援を行っています。

可能なかぎりサプライズがない事業承継を。普段から、そうしたことを意識した経営をお勧めしたいと思います。

回答者・桐明幸弘さん

ファミリービジネス事業承継研究所、日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)フェロー

福岡市出身。東洋信託銀行(不動産・国際業務)、レコフ(M&A仲介会社)、監査法人トーマツに勤務。太平洋クラブ社長、福岡市経営顧問、神奈川県行政改革推進協議会委員を歴任。旅館・ホテル・ゴルフ場など、レジャー・観光産業に精通する経営財務(コーポレートファイナンス)のプロアドバイザー。日本の中小企業のほとんどが同族経営であることから、ファミリービジネスアドバイザーの資格認定証を持ち、特に事業承継問題の解決に尽力している。

みんなの経営相談」は、毎日のように湧き出してくる困り事や悩み事をリファラバのナビゲーターや、ファミリービジネスへのサポート経験が豊富な専門家たちが、一つ一つ親身になって答えていきます。

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